「地方営業」と言う一種独特な職務上、普段から実に様々な種類の列車に乗る事になります。
自身の営業テリトリーがナゴヤ中心ゆえ、毎シーズンいつも繁忙期ともなるともはや東海道新幹線が「通勤電車」と化すワケで、
新幹線車内で居眠りしてても眼を開けて外の景色を見れば正直「今どこを走っているか」イッパツで分かるイキオイです。
そんな、新幹線から特急列車ひいては鈍行列車に至るまで数多くの列車に乗った中で、個人的にとりわけ気に入っている路線が有ります。
愛知県~長野県を結ぶ特急「ワイドビューしなの」です。
特急「ワイドビューしなの」は、JR大阪駅・JR名古屋駅~JR長野駅を繋ぐL特急で、最長営業㎞が441.2㎞にも及ぶ長大な長距離列車です。
岐阜県東濃地域を縦貫し、険峻な山間部を通過する為に急曲線が非常に多く、列車として「制御付き自然振り子式車両」が採用されています。
また今まで何度も利用した中で、通勤時間帯を中心にナゴヤの市内を走るJR中央本線の普通列車及び快速列車の遅延による影響を受け易く、更に山間部における天候の急変等も有り、実際に列車の遅れが日常的に多発する特急列車でもあります。
・・もしかすると時刻表通り走った記憶の方が少ないかも・・
一方で、長野県中信地域と長野市を繋ぐ地域輸送としての側面も担っており、個人的にもJR松本駅とJR長野駅の往復に際し幾度と無く利用している路線でもあります。
実に個人的に思い入れの深い特急列車です。
実際に、10月某日、出張で利用した特急「ワイドビューしなの」の旅の風景を追ってみましょう。
JR名古屋駅を16:00に発車する、特急「ワイドビューしなの」19号です。
三連休明け直後のド平日と言う/事で、列車内もかなり空いています。・・乗車率は約20%前後と言った所でしょうか。
ナゴヤを出ると、JR千種駅→JR多治見駅→JR中津川駅→JR木曽福島駅→JR塩尻駅→JR松本駅→JR篠ノ井駅に停車し、終着のJR長野駅までノンビリおよそ三時間弱の旅です。
JR名古屋駅を出発して間も無く、一通り車内アナウンスが終わったタイミングで、列車は「名古屋市の東の玄関口」JR千種駅に停車します。
名古屋市営地下鉄線との接続駅で、高層ビルに混じって数多くの予備校や専門学校が軒を連ねており、学生街としての側面が色濃い街です。
以前、個人的にもナゴヤの市内中心部から春日井市方面に出る際によく利用した駅です。
JR千種駅を出てしばらくは市街地と住宅街の風景が続きますが、JR高蔵寺駅を通過しJR定光寺駅からJR古虎渓駅にかけて一気に秘境気分を堪能出来る風光明媚な車窓に変わります。
そして列車は間も無くJR多治見駅に到着します。
「美濃焼」の産地として知られる岐阜県多治見市は、愛知県との県境に面し、立地的に「名古屋市のベッドタウン」としての性格が強い都市です。
また、埼玉県熊谷市と共に日本国内における観測史上最高気温を叩き出し、「日本一暑い街」としても知られています。
JR多治見駅を出発しておよそ30分弱、列車は次の停車駅JR中津川駅に到着します。
岐阜県南東部に位置し東濃地域の中核都市でもある中津川市は、かつて江戸時代に旧中山道の宿場町として栄えた、情緒溢れる歴史深い街です。
また木曽川水系に流れ込む市内の清流は非常に美しいと評判です。
一方で、隣接する長野県との関連性が濃いと思いきや、意外にも実際は経済面・文化面においても中京方面の影響の方が強いとの事です。
JR中津川駅を出て国道19号線沿いにしばらく走ると、列車は険しい山々が連なる長野県に入ります。
深い木曾谷を木曽川の渓谷に沿って美しい車窓を堪能しつつ、いよいよ特急「ワイドビューしなの」最大最強のハイライト、景勝地「寝覚の床」を通過します。
木曽川の水流によって花崗岩が侵食されて出来た雄大な自然美で、今尚「浦島太郎伝説」が残る、国の名勝に指定されている場所です。
個人的に、初めてエメラルドグリーン色のそれを見た時、感動して鳥肌が立ったのを今でも覚えております。
その後しばらくして、列車はJR木曽福島駅のホームに滑り込みます。ナゴヤを出発して約90分弱、時間的にようやく折り返し地点に到達です。
木曽御嶽山から連なる深い山々に囲まれた長野県木曽郡木曽町は、特に厳しい冬の季節になると実に壮大な雪景色を堪能する事が出来ます。・・もはやここまで来ると「出張」と言うより完全に「観光」気分です。
いっそ課せられた任務をここで放棄して、「途中下車しローカルバスに乗って山奥の秘境に佇む一軒宿でユックリ温泉を」・・それだけはいけません。
厳しい現実と向かい合いながら、しばらくして、列車はいよいよJR塩尻駅に到着します。
JR中央本線の境界駅で、ここで管轄がJR東海からJR東日本にバトンタッチされます。
かつては旧中山道と旧北国西街道の宿場町として整備され、また現在も複数の主要な国道が集中する、まさに今も昔も県央部における「交通の要衝」と言った所でしょうか。
時間的にも、そろそろケツが痛くなってくると同時に、腹も減ってくる頃合です。
周辺では駅弁「とりめし」がなかなかの評判と聞いていますが、金銭的に超ギリギリな出張中の為、まァ機会を改めて味わってみたいと思います。
腹を空かしながら、程無くして、列車は次なる停車駅JR松本駅に到着します。ナゴヤを発っておよそ120分強、現実的にも精神的にもいよいよ「終着駅」が見えてきました。
時間的に夜のラッシュなのでしょうか、在来線のホームは何気に大変な人ゴミです。いかに松本市が県内における産業の主要都市として機能しているか垣間見る事が出来ます。
またJR松本駅周辺は、PARCO(松本)を中心にファッション感度も県内随一の高水準を維持していると思います。
実際に、市街地のCrockett&Jonesを中心に独自のセレクトを展開されている老舗の某靴専門店には、個人的にも何度かお世話になった事が有ります。
正直、県庁所在地の長野市とは全く一線を画す街並みです。
JR松本駅を出発してしばらく、信州が誇る壮大な山々を眺めながら、列車はいよいよ先程の「寝覚の床」に続く第二の名所スポットを通過します。
JR姨捨駅付近から見晴らす、「日本三大車窓」の一つに数えられる善光寺平の壮観な大パノラマです。
当日は日が暮れて真っ暗だったのでJR姨捨駅を通過した事すら分かりませんでしたが、翌日再度JR松本駅に向かった際に何とか自慢の絶景を眺める事が出来ました。
かつて甲越両軍が熾烈な合戦を繰り広げた、有名な「川中島の戦い」の地です。
・・そんな過去の歴史に想いを馳せながら、・・そしてケツの痛さと空腹に何度も心が折れそうになりながら、列車は次なる目的地JR篠ノ井駅に停車します。
JR篠ノ井線・JR信越本線・しなの鉄道線の三路線が乗り入れる駅で、ようやく長野市郊外の市街地に辿り着いた印象です。
そして、間も無く終着駅のJR長野駅です。
窓の向こう側は、いかにも信州の県都らしい、全体的にどこと無く控えメな市街地の街並みです。
ナゴヤを出発して約三時間弱、やっと終点JR長野駅に到着です。
ホームに降り立った瞬間「寒・・」と直感的に感じたのは、単に標高が高い為だけでは無く、その澄み切った空気のクリアな透明度も大きく影響しているのかも知れません。
すっかり陽も落ち、当日は駅近く、お気に入りの「飛騨料理」の店にそのまま直行です。
・・「地方営業」と言う一種独特な職務上、普段から実に様々な種類の列車に乗る事になります。
JR甲府駅~JR静岡駅を結ぶ特急「ワイドビューふじかわ」です、・・この話はまた改めて次の機会に・・